日帰り手術について

白内障とは

目の中には水晶体といって、カメラのレンズに相当する部分があります。
正常な水晶体は透明で、外から目の中に入ってきた光を屈折し、 網膜にピントを合わせる役割をもっています。
この水晶体がにごり、透明ではなくなった状態を白内障といいます。
年齢(加齢)が原因であることがほとんどですが、 他にステロイド薬など薬によるものや、
アトピー性皮膚炎に伴うもの、 目の病気に併発するものなどもあります。

手術を受けるタイミング

白内障は薬では治らず、治療は手術しかありません。
手術のタイミングとしては、ご本人が日常生活で不便を感じるようになった時となりますので、
お一人お一人の生活スタイルによって異なります。

下記のような症状があったり、視力が良くても何らかの不自由を感じておられたら、
最適な治療および時期等に関して何でもご相談ください。

→さらに詳しく説明を読みたい方へ

白内障手術について

ほとんどの白内障手術では、超音波で水晶体を取り除く方法をとります。
(この術式で終了することがほとんどですが、手術の難易度に応じて変更する事があります。)

1

麻酔をかける

手術は点眼麻酔で行います。痛みはほとんどありませんのでご安心ください。
痛みに特に敏感な方は注射での麻酔を併用致します。

2

水晶体の表面に丸い穴を作る

水晶体の前の膜を直径約5.5mmの円形状に取ります。

3

濁った水晶体を取り除く

超音波白内障乳化吸引装置を用いて水晶体の中身を砕いて吸い出します。

4

眼内レンズを折りたたんで入れる

空になった水晶体内に直径約6mmの眼内レンズを折りたたんで挿入します。

5

眼内レンズの固定

眼内レンズは眼内レンズを支える脚により水晶体内に固定されます。

手術時間

ほとんどの方が10分未満です。
難症例の方や、術中に合併症が生じた場合は手術時間が数十分延長されることがあります。

手術を受けるスケジュール

手術前

1

初診・再診

診察・手術予約をします。

2

手術前

術前検査、手術説明をします。
ご家族の方と一緒にお越しください。

3

手術3日前から

術前点眼を開始します。

4

手術前日

入浴・洗髪を済ませてください。

5

手術当日

朝も術前点眼をしてください。
決められた時間までにお越しください。

手術後

1

手術当日

手術直後より保護眼鏡を装用してください。
入浴・洗顔・洗髪はできません。
痛みがあれば我慢せずに、痛み止めを内服してください。

2

術翌日

術後診察があります。
首から下のシャワー、入浴が可能です。
点眼開始してください。

3

術後1週間

洗髪・洗顔が可能です。
(眼の圧迫をしたり、水が入らないように注意してください)

4

術後1週間

保護眼鏡を外しても大丈夫です

5

術後1ヶ月

日常生活にほぼ制限がなくなります。
視力が安定してきます。

※症例により上記スケジュールとは異なる場合があります。

眼内レンズについて

1. 人間の水晶体

人間の水晶体には、厚さを自動的に変えることで見るものに焦点を合わせる機能があります。
近くを見るときは水晶体が厚くなり、遠くを見るときは薄くなります。
しかし、年齢を重ねることで、水晶体の厚みを調整する機能が衰え、焦点が合いづらくなるのが老眼とよばれる症状です。

2. 単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズについて

白内障手術時に眼内に挿入するレンズは、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの2種類があります。
単焦点の場合は、術後ピントの合う位置は一点のみとなります。
例えば、「遠方」を選んだ場合は、「近方」はぼやけてしまい、「近方」を選んだ場合は、「遠方」がぼやけます。
多焦点眼内レンズは、ピントが合う位置が何箇所かあります(レンズの種類によります)。

多焦点眼内レンズを選択した場合は、眼鏡に頼る頻度が減ります。
術後に眼鏡に頼る頻度を少しでも低くしたい場合は、多焦点眼内レンズをお勧め致します。
メリットだけではなく、デメリットもよく把握して頂いた上でお選びいただき、
皆様が満足のいく視機能を取り戻せるようお手伝いさせていただきます。

3. 手術後に眼鏡をかけずにどこが見たいですか?

手術後に眼鏡をかけずに見たい距離を参考に、眼内レンズの種類を決めます。

4. 多焦点レンズの注意点

ハロー、グレア、waxy visionについて
多焦点レンズの光学的特性から、夜間に街頭や車のランプに輪っかができる(ハロー)、光が散って見える(グレア)事があります。
また、薄い膜が一枚かかったように見える事(waxy vision)があります。
こうした症状は時間が経つにつれてなれてくると言われています。
レンズの種類によってはこうした弱点が少ない、もしくは、ほとんどないものもあります。
見え方になれるまで時間がかかります。
多焦点レンズは複雑な構造をしているため、眼で得られた像が脳になれるまで時間がかかる事があります。
そのため、視力回復が単焦点レンズにくらべてゆっくりであることをご理解下さい。
追加手術が必要となる事があります。
術前に眼球の形状を非常に精密な機器で測定し、
それぞれの眼に合ったレンズ度数を決定しますが、時にずれが生じてしまう事があります。
ずれが大きく見え方にご満足いただけない場合は、レンズを入れ替えたり、
他施設でのレーザー追加矯正手術が必要となる事があり、追加費用がかかります。

多焦点眼内レンズにはデメリットもございます。
そうしたデメリットを良くご理解いただいた上で選択されることを強くお勧め致します。
少しでも分からない事があれば、いつでも何度でもご相談下さい。

5. 当院で扱う多焦点眼内レンズの種類

選定療養対象レンズ

自費診療対象レンズ

費用について

白内障手術の費用は、眼内レンズの種類によって異なります。
費用については下記の表を参考にしてください。

単焦点 眼内レンズ

単焦点眼内レンズを選択された方は、医療保険が適用されます。

医療保険1割の場合約2万円
医療保険2割の場合約4万円
医療保険3割の場合約6万円

多焦点 眼内レンズ

医療保険1割の場合約2万円+20万円〜
医療保険2割の場合約4万円+20万円〜
医療保険3割の場合約6万円+20万円〜
テクニスマルチフォーカル20万円
クラレオンパンオプティクス35万円

選定療養について
令和2年4月より、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は、厚生労働省が定める選定療養の対象となりました。
費用は選定療養の部分は医療保険が適用されず、全額自己負担となり、使用するレンズの種類により異なります。

自費診療対象レンズ

インテンシティー片眼55万

当院では、日本で認可されている多焦点眼内レンズより、
見え方の質などがより優れていると評価されている輸入による多焦点眼内レンズも使用しており、
その場合の費用は全額自費での扱いとなります。
手術費用+レンズ代金+術後点眼・内服+手術後1か月までの診察・投薬・検査料金すべて含んだ費用となっております。

安心・快適な手術

一例、一例、心をこめて丁寧に手術を行います。

現在まで数多くの手術を執刀してまいりましたが、患者さまにとっての白内障手術は一生に一度のご経験です。
この経験を素晴らしいものにするために、一例、一例、心をこめて丁寧な手術を心がけます。

万が一の合併症にもその場で対応できます。

白内障手術中に起こる合併症の中に、残すはずの水晶体の袋が破れてしまい、
濁りが眼内に落ち込んでしまう「核落下」という状態があります。
この「核落下」は非常に頻度は低いものの、誰でもどんな時でも起こる可能性があり、対処方法は硝子体手術しかありません。
当院では最新の硝子体手術機器も整備しており、硝子体手術経験の豊富な術者が執刀致しますので、万一の合併症にもその場で対応できます。

合併症について

失明につながる危険のある合併症はほとんどが硝子体手術を必要とします。
当院では硝子体手術の経験も豊富な医師が執刀いたしますので安心してお受けいただけます。

頻度は極めて低いですが、重篤な後遺症を残す可能性のある合併症

眼内炎 (0.05%)
眼内にばい菌が入りこんで化膿する事が稀にあります。
術後合併症で最も重篤なもののひとつで、放置すると失明に至ります。
術後見え方が急におかしくなったり、強い痛みや充血を認めたら必ずご連絡ください。
駆逐性出血(0.02%)
手術中に眼内で突然大出血を起こす事が稀にあり、発症した場合は手術を中止致します。
出血の状況にもよりますが失明に至る可能性は0ではありません。
後嚢破損、核落下(0.5%~0.1%)
手術中に水晶体の袋が破れてしまう事があります。
破れた時に水晶体の濁りが残っていれば眼内に落下するため、追加の硝子体手術が必要となります。
手術時間が數十分~1時間程度延長されますが、視力の回復には影響しない事が多いです。
チン小帯断裂(個人差あり)
水晶体を支えている無数の糸がもともと弱い方であり、
眼内レンズを支えきれないと判断した場合は手術を中止し、後日レンズを縫い付ける手術を予定します。
術前から予想できる場合にはあらかじめ縫い付け手術の準備をして手術に臨みます。

眼内レンズの偏位・脱臼
白内障手術後に、 経年変化やなんらかの原因で眼内レンズが傾いたり (偏位)、所定の位置から外れてしまう場合(脱凹)があります。
また、 様々な理由で水晶体嚢内に眼内レンズを固定できない場合もあり、 眼内レンズを眼の中に縫いつける必要があります。
これには、 再度手術が必要になります。
眼内レンズの脱臼が起こると、 処置をするまでは視力が落ちます。
白内障手術後に突然視力が悪化した場合等は、 なるべく早目に受診してください。

人によって発生頻度が違い、
場合によっては後遺症を残す可能性のある合併症

虹彩脱出
もともと虹彩(茶目の部分)の張りが弱い場合があり、一時的に創口から眼外に脱出してしまう事があります。
見え方に影響することはほとんどありません。
迷走神経反射アレルギーショック
手術に対する過度の恐れや眼球圧迫操作が原因となり、一時的に脈が遅くなる方がいます。
また、術中使用薬剤が原因でアレルギー反応を起こし、生命の危険を伴う可能性が極めて稀ですがあります。
角膜浮腫
手術が原因で角膜を透明にする細胞が減少し、角膜の透明性が低下する事があります。
ほとんどの場合一時的で、次第に回復していきます。
万一、回復しない場合は極めて稀ですが角膜移植が必要となる可能性があります。
嚢胞様黄斑浮腫
術後極めて稀に網膜中心部に腫れを起こし、視力が低下する事があります。
術後炎症と関連があり、治療により改善する事が多いです。
眼圧上昇
術後眼圧が上昇する事がありますが、点眼や内服で改善する事がほとんどです。
元々緑内障などの異常がある方に起こりやすいです。
残留皮質
術中に発見できなかった残留物が術後に見つかる事があります。
視力に影響する場合は再手術で除去致します。
術後の度数ずれ
眼内レンズの度数は術前検査の結果を元に決定しますが、角膜疾患や網膜疾患がある方は予測値と大幅にずれてしまう事があります。
その場合は10分程度のレンズの入れ替え手術を行います。
眼瞼下垂・複視・その他
術後に瞼が上がりにくくなる事が稀にあります。
もともと斜視のある方は術後視力の回復が原因となって、ものが二重に見える可能性があります。

手術によって以下のような見え方になる事がありますが、異常ではなく次第 に慣れていくことがほとんどです。

・糸くずが飛んだように見える。
・夜間光が散ったり、滲んだりする。
・周辺の光が走るように見える。
・ややものが青白く見える。
・まぶしい

手術機器

硝子体白内障手術機器 「Alcon社CONSTELLATION®」

日本で最も使用されている硝子体手術器械で、高い次元の網膜硝子体手術に対応しています。
硝子体手術はもちろん、難症例白内障手術時にもこのマシンがあれば、合併症にその場で対応できます。

白内障手術イメージガイドシステム Alcon社 「VERION」

目の形状を解析し、白内障手術の精度を高めるシステムです。
切開位置、前嚢切開位置・大きさ、IOLの固定位置、乱視軸をモニターの顕微鏡画像上に表示でき、
より正確な手術が可能となり、さらなる術後裸眼視力の向上が期待できます。

VERION -白内障手術イメージガイドシステム-

イメージガイドシステムは、白内障手術の精度を上げるための器械です。
従来の白内障手術では、手術や検査で生じる変数が多く、予想外の術後結果を引き起こす可能性がありました。

VERION™イメージガイドシステムでは、術前に測定したデータに基づき最適な手術計画を行い、
術中に適切な位置にガイド表示させ、手術精度を向上させることができます。

VERIONを使用した白内障手術の流れ

術前
1

外来で検査を行います。一人一人の身体に特徴があるように眼にも個々の特徴があります。ARGOSでは、強膜血管、角膜輪部、虹彩などの特徴を捉えて測定します。

2

個々の眼の特徴をあらかじめ機器で解析し、再現性と信頼性を確かめて、手術の計画を行います。

術中
3

切開位置にガイドを表示

4

前嚢切開(CCC)時にガイドを表示

5

眼内レンズの固定位置のセンタリングを表示

6

乱視用レンズ(トーリック)の軸の位置を眼球回旋を考慮して表示